日本人の長時間労働の解決について

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インドに住むと、日本の長時間労働は異常だったと感じます。

 

どのような社会になれば日本の長時間労働は改善していくのでしょうか。

 

ニューヨークで語学留学をしていたとき、アメリカ人の先生が"hardworking"(仕事熱心)という単語はポジティブか?ネガティブか?と質問をしました。

 

興味深いことに、この質問に対して日本人と韓国人の生徒が全員"ポジティブ"と言ったのに対し、イタリア人、スペイン人、フランス人の生徒は「ネガティブに決まってるだろ。hardworkingがポジティブだなんてクレイジーだ」と言いました。

 

私も、今は"hardworking”と聞くと「仕事中毒"workaholics”」というブラックなイメージを連想しますが、当時は仕事熱心というのはとても良いことに感じていました。

 

そして、アメリカ人の先生から告げられた正解は、"ポジティブ"でした。

 

この点で、アメリカ人は日本人や韓国人と同じ感覚であったようです。

 

アジアでも、以前カンボジア人から「カンボジアでは昔からマンゴーが不労所得として落ちてくるから、働く必要性を感じられなくて怠け者の国民性になった」と言われたことがあります。

 

このように、働くことに対する感覚は地域によって異なるようです。

 

一方、同じ地域でも時代によってこの価値観は変化するのではないかと思います。

 

旧石器時代など、狩猟採集時代の人々は1日4時間程度しか働いていなかったそうです。

 

それが本当かは分かりませんが、少なくとも、動物や木の実を取って食べるだけなので、過労死するほど働くということは考えられません。

 

一方現代人は、朝から晩まで長時間労働も厭わず頑張って働いており、働くことが美徳とされています。

 

しかし私はこれから、時代がかわっていく事で、働くことに対する価値観も変わっていくのではないかと考えています。

 

そもそも、石器時代に比べて科学技術は大幅に進歩し、機械化が進んでいるはずなのに、現代人はなぜこんなに長時間働かなければならないのでしょうか?

 

それは、機械、設備や土地などの生産設備を持っていない人々(労働者、無産市民)は働いて金銭収入を得なければ生きていけないためです。

 

石器時代であれば、誰でもすぐに収入(動物や木の実)を手に入れることができます。

 

しかし今から皆さんが石器時代の生活を送ろうとするとどうなるでしょうか。

 

まず竪穴住居を立てようにも土地の購入が必要だし、そこら辺にある木の実を勝手に取ったり動物を殺して食べることもできません。

 

仮に土地を手に入れて竪穴住居を立て、そこに植えた木の実を食べて生活しようとしても、固定資産税はお金で払わなければなりません。

 

現代社会は、土地なり設備なりを手に入れて、それらで生産してお金を生み出さなければ生きていけない世の中になっています。

 

生産設備を持っている人たち(資本家、有産市民)はそれらの設備を使って物を生産、販売したり、使用料を徴収することもできます。

 

一方、科学技術が進歩しても生産設備を持っていない人(労働者、無産市民)は働き続けなければなりません。

 

 

「働かずに不労所得で暮らしてる人がいるから、労働者はいつまで経っても長時間労働をしなければならない。従って、資本家から生産手段を没収して国が管理し、労働に平等に富(お金)を分配すれば怠け者がいなくなって豊かになるはずだ」

 

と考えたのが共産主義でした。

 

しかしこれは大失敗し、世界中で何千万人という人が命を落としました。

 

「生産手段を全て国が所有して計画を立てて生産する」という考え方が共産主義の計画経済でしたが、あらゆる事態を計画するというのは不可能なので、効率が悪くうまくいかなかったのです。

 

結果的に資本主義、市場経済が世界で受け入れられたのですが、労働者は相変わらず長時間働き続けなければなりません。

 

この状況を打開する一つの案として、ベーシックインカムが議論されています。

 

ベーシックインカムというのは、政府が国民全員に毎月の生活費を無条件で払うという制度のことです。

 

国民全員が生活費を受け取れるようにすることで、生活のために嫌な仕事をさせられている人達を解放し、誰もが自由な人生を送れる社会にしようというのがベーシックインカムの趣旨です。

 

これが実現すれば、働かなくても毎月最低の収入が権利収入として勝手に口座へ振り込まれるようになります。

 

今でも生活保護制度というものがありますが、生活保護と異なるのは「誰でも無条件に」受け取れることです。

 

生活保護の場合には政府による査定がありますが、ベーシックインカムの場合にはそれがありません。

 

働ける力のある人でも、働きたくなければ働かなくて良いですし、全員が受け取るので「ベーシックインカムを受け取っているのでみっともない」ということもありません。

 

また共産主義との違いは、共産主義では生産手段の国有化と計画経済が採用されましたが、ベーシックインカムはあくまでも資本主義の枠組みで行われるため生産手段の私有や市場経済は否定されません。

 

ベーシックインカムを別の角度から言うと、仕事ができないのに会社にしがみつく効率の悪いサラリーマンには働くのを辞めてもらい、資本主義を徹底的に効率化しようという試みでもあります。

 

一定の生活費が保証される代わりに、解雇規制はなくなり会社は容赦なく労働者をクビにすることができます。

 

ベーシックインカム実現後の経済は剥き出しの自由主義経済で、そこに着いていけずに振り落とされた人の生活を守るためにベーシックインカムがあるとも言えます。

 

経済が徹底的に効率化され生産性が上がることで税収も増え、全国民の所得をベーシックインカムで賄えるという発想です。

 

 私は、国の財源が持つのかとか、インフレにならないのかとか、そういった経済学に関する技術的な議論は(私は経済学部出身ですが)よく分かりませんので一先ず置いておきます。

 

経済学的に不可能であれば無理な施策ですが、もし財政が持つのであれば導入すべきものと思います。

 

このベーシックインカムによって、「働かざる者食うべからず」という観念が崩れます。

 

嫌な上司の顔色を伺って我慢する必要がなくなり、誰もがやりたくない仕事から解放され、自由に過ごせる世の中になるのです。

 

「食ってかなきゃいけないんだから、嫌なことでも我慢しなければならない」という議論は全て無意味なものとなります。

 

「食っていかなきゃいけない」という議論に逃げることができなくなり、誰もが自由な時間を与えられ「自分が本当にやりたいことは何なのか」について真剣に考えなければならなくなります。

 

サウジアラビアでは石油の収入によって全国民が養われるため、勤労意欲がなくなり国民が怠け者になっている、という話も聞きます。

 

しかし、過労死やうつ病自殺を大量に発生させる社会よりは怠け者が多い社会の方がまだマシなのではないでしょうか。

 

自由になってやることがないときに人生をどう充実させるのか?は、社会の問題というよりは各個人の問題のように思います。

 

本来、仕事ができなくてヤル気のない人の最低限の生活を保護する責任は国にあると思うのですが、今の日本ではその生活保護責任が企業に転嫁されているという印象を受けます。

 

正直なところ、企業が自由に解雇できないから社員の採用に慎重にならざるを得ず、雇う側も雇われる側も「とりあえず採用/入社してみて、合わなければクビにする/退職する」ということができません。

 

一度雇った人を簡単にクビにできないので、企業側も「一度雇ったからには長く働いて欲しい」と考えると思います。

 

私は、解雇規制を撤廃して企業が合わない社員を自由にクビにできるようにすることで、日本の閉塞感はかなり打開できるのではないかと思います。

 

ただ前提として、生活が保証されなければならないので、その部分をベーシックインカムで補うことで自由な社会が実現するのではないかと考えています。

 

ベーシックインカムがあることで、働けない状態(精神が病んでしまった場合)に無理して働く必要もないですし、やりたいことにチャレンジしたいことがある場合にはチャレンジできます。

 

働きたくない時には働かなくて良いので、これを達成してようやく石器時代より自由な社会と言えるのではないかとも考えています。

 

このような時代になれば、「嫌いな仕事をするくらいなら働かない方が健全」と考える世の中になる可能性もあると考えています。