インドで存在給が上がる

日本にいた時に、心屋仁之助という人が書いた「一生お金に困らない生き方」という本を読んだことがありました。内容をざっくり言うと、人が受け取るお金には「存在給」と「歩合給」があるということでした。

存在給・・・頑張らなくても、寝たきりでも、自分が存在するだけで受け取れるお金

歩合給・・・一生懸命頑張って稼ぐお金

その本によると、一生懸命頑張ると歩合給は上がっていくものの、歩合給が上がれば上がるほど存在給は下がっていき、一生懸命頑張らなければ生きていけない状況に追い込まれるそうです。その負のスパイラルから抜け出すには存在給を上げる必要があります。頑張れば頑張るほど歩合給は上がって存在給は下がっていくので、存在給を上げるために必要なのは「頑張らない」ということだそうです。

ameblo.jp

僕は、この概念に気付いてから、

仕事を減らす=稼ごうとするのをやめる

仕事を減らす=人の役に立とうとするのをやめる

ガンバルのをやめる=サービスの質を高めようとするのをやめる

をすればするほど、収入は上がっていきました。

私が本屋で「一生お金に困らない生き方」を見つけたのは日本の仕事が最も忙しい時期でした。経理だったので、毎月月初と四半期末はとても忙しく期末に至っては休日まで働き、今振り返るとよく倒れなかった思います。

自宅と会社は電車で1時間ほど離れていました。自宅と駅、会社から駅までもそれぞれ徒歩で10分ほどあり、駅で電車を待っている時間も含めると片道1時間半以上かかっていたと思います。最も忙しい時期は朝6時に起きて7時に電車に乗り、会社近くのカフェに寄って9時に会社へ着きました。そして夜の11時頃まで働き、寝るのは夜1時すぎでした。夜ご飯は退社後に会社の近くで大戸屋かラーメンという最悪の生活でした。

通勤ラッシュは酷かったですが、始発駅だったので(あえてその駅を選んだのですが)朝は座ることができ、電車の中で睡眠時間を確保していました。そんな生活を週5日送り、週末も出勤をすることがあるしている最中だったので、「頑張るのを辞めるとお金が入って来る」なんて言われても意味が分かりませんでした。

私は既に3社目だったので、「頻繁に転職すると評価がどんどん下がる」「給料を上げるには専門知識と経験が必要」と考えていたので、大変でも石にかじりついて頑張らなければならないと思っていました。特に、もう少し頑張って連結決算を担当できるようになれば転職市場での市場価値が大幅に上がると考えていました。

もともと前職は「2〜3年日本で経理の経験を積んだら海外子会社の財務経理を任せる」という話を聞いていたのですが、海外子会社の業績が悪く管理部門で駐在という可能性が薄いことも分かり、何のために働いているのか分からない状態になっていました。

財務経理の専門性を磨ける環境ではあったので、その環境で専門性を磨いて、より海外へ行ける可能性の高い会社へ転職するしかないと考えていました。そんな時、妻から「残業も多すぎて顔色も悪いし、そもそも海外へ行く話はどうなってるの?会社辞めて現地採用で海外へ行っちゃおうよ」と言われました。

私の中で、現地採用というのは非常に待遇が悪く、厚生年金も健康保険も外れて、非常に貧乏で「海外のためにキャリアを捨てる」というイメージがありました。また「片道切符」と呼ばれ、現地採用としてアジアへ行ってしまうと日本へ戻ってきた時に渡航前より待遇が著しく悪くなるという話も聞いていました。20代後半の独身の人たちなら構わないかも知れませんが、30歳を過ぎて結婚をしている私が現地採用というのはちょっとあり得ないんじゃないか?と思いました。しかも私は前職に入社してから1年半程度しか経過していませんでした。

なかなか度胸がつかずに決断できないでいる時、心屋仁之助さんの本を何冊か読みました。

1「これをやらないと生きていけない」と思うことを辞めてみる

2「それだけは絶対にダメ!」と思うことをやってみる

3「これをやったら絶対に損する!」と思うことをやってみる

という趣旨のことが書かれていました。これを私の状況に当てはめて考えると

 1「連結決算のスキルをつけないと生きていけない」と思っていたので、それを辞める

2「3年以内の転職は絶対ダメ」と思っていたので、それをやってみる

3「現地採用で海外へ行ったら絶対に損する」と思っていたので、それをやってみる

これが私にとっての「頑張るのを辞める」ということでした。心屋さんによると、「頑張るのを辞めると、何か知らんけど色々なことが上手く回って生活が豊かになり、お金も増えてる」というのです。私は「頑張るのを辞めたらお金が入ってくるだろう」というよりも、「もうこれ以上頑張れないから、もう無理。質素な生活で良いから好きなように暮らしたい」という感じでした。

そして、頑張るのを辞めて会社を退職しインドへ転職した結果どうなったのかというと、日本に比べて生活の質が豊かになっていてビックリしました。手取りの給与自体は日本よりも少し下がったのですが、インドは物価が遥かに安く、また物がないので「知らない間にお金を使っていた」ということが全くありません。日本にいた時はペットボトルの烏龍茶を買ったりドトールでコーヒーを飲んだりマッサージで疲れを取ったりと、知らない間にバンバンお金が減っていました。

そしてインドへ来てから旅行へも気軽に行けるようになりました。日本にいた時は行こうにも成田も羽田も遠く、そもそも日本の近くにある国といえば韓国と台湾くらいしかなく、国内旅行も移動代や宿泊代がバカみたいに高くて行く気になりませんでした。それに対してインドでは、飛行機の時間帯を選ばなければ往復1万ルピー(14000円)でインド国内の大抵のところやスリランカへは行くことができます。

日本で働いていたときは年に1回くらいしか飛行機に乗っていなかったのに対しインドに来てからはほぼ毎月飛行機に乗っていて、それでいて知らない間に貯金も貯まっています。

そして仕事内容についても、日本にいるときは作業担当だったのに対し、インドに来てからはインド人の業務の進捗管理、納品物確認、顧客との成果物やスケジュールの調整等のいわゆる管理監督業務をしています。

私は、作業を正確かつ迅速にやるのが苦手で、細かいチェックなどは「誰かやってよ」というのが正直なところでした。どちらかというと、複雑なことを噛み砕いて説明したり、進捗管理をしたりといったことの方が苦痛に感じません。今は細かい数字の確認などは全部インド人がやってくれて、私の仕事は顧客との折衝などなので、とても助かっています。

私にとっては、インド人が遅刻して2時間待たされるよりも東京で満員の通勤電車に毎日往復2時間乗っている方が遥かに苦痛でした。今の生活は(毎日イライラすることだらけとはいえ)頑張っているというより楽しんでいるのですが、多くの日本人にとっては「インドの生活は日本より苦しいはずだから、とても頑張ってインドで生活しているんだろう」と考えてくれます。

これが私にとって「存在給が上がった」ということなのかなと感じています。もちろん、将来子どもができたり日本へ帰った時にどうなるのかは分からないものの、 「インドに行かなきゃ良かった」とはならないだろうなと思います。