結婚して独身よりも自由になる

既婚者が海外就職を目指す場合、パートナーの理解と協力が何より不可欠です。独身であれば自由に海外就職もできるが、結婚すると不自由になると感じる方もいるかも知れません。

「結婚するか自由を取るか」と悩む人がいますが、個人的には結婚してこそ自由になる夫婦もあると思います。「結婚したら自由になる」と言うと、「結婚して家事を分担するから自分の時間を確保できる」とか、「結婚すると世帯での収入が増えるから自由に使えるお金が増える」とか、そういうことをイメージする方もいるかもしれません。しかしそれだと「宝くじで3億円当たれば自由な時間も豊富なお金も手に入るので結婚する必要がない」という話になります。

 

私が考える「自由」は「義務がない」とか「好き放題できる」ということではなく、「自分らしくいられる」ということです(そもそも「自由」という言葉は、「自分に由る(よる)」という仏教用語に由来するそうです)。私の場合、周りに流されて自分では自分の状態が分からなくなってしまうことがあります。そんなとき、妻から「顔死んでるよ!」と言われてふと我に返ることがあります。

 

最も顕著だったのは、日本で長時間労働をしている時でした。私は面接で「日本国内で1年くらい経理の経験を積んだら海外へ行って子会社の管理部門を任せるよ」と言われて前職に入社したのですが、海外子会社の採算悪化等もあり海外へ行ける見通しが全くありませんでした。しかし経理としてのスキルはついていたので、連日の長時間残業をこなし頑張っていました。そんな時に妻から「当初の目的からズレてない?顔死んでるけど大丈夫?」と言われました。

 

私としては、海外へは行けなくても経理としてのスキルを磨いていける環境だったので「数年間は頑張ろう」と思っていたのですが、妻から「本当にそう思ってるならいいけど、『本音は違う』って顔に書いてあるよ」と言われ、結果的にインド転職を決断しました。独身で妻の後押しを得られない状況であればここまでの思い切った決断は出来なかったと思います。


人付き合いもそうです。例えば私が飲み会へ参加したあと、楽しそうに帰って来る時とイライラして帰って来る時があるのですが、私自身は自覚がありません。しかし妻から見ると一目瞭然で、楽しそうに帰ってきたときは「気分転換になって良かったね」と言われるのですが、つまらない飲み会から帰ってくると「今日はつまんなかったんでしょ?イライラされて帰ってきてもこっちも困るから、その人達との飲み会は次から断ってくれない?」などと言われます。

 

私は「長い付き合いなんだから、誘われたら断れないじゃん」などと反論するのですが、喧々諤々何時間も口論をすると、私自身も本音では行きたくなかったものの付き合いで行っていたことを自覚し、次からは断るようにします。誘いを断るのは大変勇気のいることで、1人では決断できないのですが、妻からの後押しでいざ断ってみると非常に心が晴れやかになります。


妻と私の立場が逆転しても同様です。妻は妻自身の友人関係について「楽しい友達か」「ただの付き合いか」がなかなか自分では分からないのですが、私から見ると「顔に書いてある」という感じですぐに分かります。


自分自身では決断を踏み切れないことでも、パートナーと協力することで決断できることがあり、その結果として1人でいるときよりも自由になる場合もあるのではないでしょうか。その時に必要なのは、自分の感情(喜怒哀楽)を素直に出すことと、パートナーの表情(発言内容ではなく)を敏感に観察することではないかと思います。パートナーが疲れ切って病んでる顔で「明日も頑張る!」と言っている時に、「何のために頑張ってるのか一緒に考えてみようか」と声をかけるのが大切だと感じています。

 

結婚をするときには収入とか家事能力とか色々な条件を検討するかも知れませんが、結局は「たとえ津波で職場と家が流されてホームレスになっても、パートナーと一緒にゼロからやっていきたいと思えるか」「相手が寝たきりになっても一緒にいるだけで安心するか」といったことが大事なんじゃないかと個人的には思います。

 

「高収入があるから」「仕事が安定しているから」「美人だから」という理由で結婚すると、その理由が失われたときに結婚生活も終わってしまうのではないでしょうか。しかし「一緒にいると自分が自分らしくいられて自由だから」ということであれば、何があっても簡単には夫婦関係は揺らがないはずです。

 

「結婚」について最もハッとさせられた映画があります。1947年に公開された"Gentleman's Agreement"というアメリカの映画です。主人公の男性は新聞記者で、ユダヤ人差別の問題を扱うため、自ら「ユダヤ人だ」と名乗って様々な差別を受けます。妻や子どももその差別に巻き込まれていくのですが、妻が辛くて爆発しかけたときに夫の友人が妻に対してこんなセリフを言います。

A man wants his wife to be more than just a companion, Kathy...

more than his beloved girl...more than even the mother of his children.

He wants a sidekick, a buddy to go through the rough spots with.

And, well, she has to feel that the same things are the rough spots...

or they're always out of line with each other.

「男性は妻に求めているのはただの同伴者じゃない。愛すべき女性でもない。子どもたちの母親でもない。彼が求めているのは困難に出会ったときに一緒に戦える相棒なんだ。そして、彼女がその困難を一緒に乗り超えようと思わなければ本当の夫婦とは呼べない」

これはもちろん男女の立場が逆転しても同じですし、同性婚でも事実婚でも三人婚でも全く変わらないことだと思います。

 

「恋愛中のカップルはお互いに向かい合うが、結婚をした夫婦は同じ方向を向く」と聞いたことがあります。私たちがインドへ来た時もそうですが、自分がやりたいことをやろうとすると必ず反対する人が現れます。その時に、困難な状況を理解して一緒に戦ってくれるパートナーは非常に心強い存在になります。

 

 私は「結婚する方が独身よりも優れている」と言いたいのではありません。一人で十分に自分らしくやっていける人や、結婚する必要性を感じない人は結婚する必要もないと思います。納得のいかない結婚をして不自由さを感じるくらいであれば1人の方が良いはずです。自分の結婚生活に不満を感じている人に限って「そろそろ年齢なんだから結婚しろ」などと言います。


また、たまに「結婚して子どもを作らない人は価値がない」などと言う人や、同性愛者に対しても「子孫を残すという生命の掟に反している」などと言う人もいます。確かに日本の少子高齢化問題を考えれば子どもを作った方が社会貢献になるのかも知れませんが、世界全体でみれば人口増加の方がむしろ問題で、同性愛者や子どもを作らない人の方が社会貢献していると言えるかもしれません。「同性愛者は人口爆発による人類の絶滅を防ぐ機能を果たしているので生命の掟には反していない」という考え方もできるはずですので、結婚したくない人や子どもを作りたくない人も罪悪感を抱く必要はないと思います。

 

結婚は義務ではなく、自分の自由を制限するものでもなく、むしろ自由にさせてくれるものではないかと感じています。結婚が不自由だと感じるのであれば無理に結婚する必要もないと思います。

www.asianlifereport.com

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