中国語の魅力

中国語の話をすると必ず言われるのが「中国語には興味あったんですけど、発音が難し過ぎて挫折しました」というものです。これは勿体なさ過ぎます!発音は確かに難しいのですが、発音さえ乗り越えれば初級卒業(中国語検定3級レベル)まで難しい壁はなく、旅行程度の会話なら比較的すぐ身につけられるのではないかと思います。 

「中国語が嫌い」「興味ない」というのは全然構わないのですが、「興味あったけど発音で挫折して諦めた」というのは残念なので、興味のある方向けに中国語の魅力をお伝えしたいと思います。ちなみに私は中国語検定2級に合格したあと中級者の壁にブチ当たったところでインドへ来てからほぼ中国語は使っていない(妻の友人や家族とオンラインで会話をするときくらい)ので、今は中国語力は停滞しています。

<中国語の魅力>

1. 10億人以上の人々と話ができる

中国は約14億人の人口を抱え、その殆どの人達が中国語を理解します。国の真ん中を東西に貫く長江という大河より南の方では標準中国語(英語では「マンダリン」と言います*1)とは全く違う言葉(広東語、福建語など)が使用されています。しかし南の方であっても学校教育はマンダリンで行われるため、中国であればどこでも標準中国語は通じます(ウイグルチベットなどの少数民族地域へ行くとあまり話せない人がいますが、学校では習っているそうです)。

中国大陸の他にも台湾、香港、マカオシンガポール、マレーシアなどにも話者が多いです。香港は広東語がメインですが最近は英語よりもマンダリンの方が通じが良いようで、マンダリンの勢力は強くなっています。

2. 日本人は漢字を知っている

中国語は発音が大変ですが、他の言語話者が勉強するのに比べれば日本人は圧倒的に有利です。まず、漢字を覚えるのに苦労しません。「花」「山」「水」などは日本語と全く一緒です。日本と中国の漢字は一部違うので紛らわしいのですが、わざわざ時間をとって勉強しなければならないほどのものではなく、教科書に書いてある漢字を見ながら何回か練習すればすぐに覚えます。

日本語もそうですが、外国人が中国語を勉強するときの最大のボトルネックの1つは漢字なので、ここを易々とクリアできる日本人にとって中国語は学びやすい言語と言えます。私は数百のタミル文字ですら覚える気になりませんので、よく使う漢字だけでも数千ほど覚えなければならない中国語は日本人以外の外国人にとって本当に大変だと思います。

漢字を知っていることにより、知らない中国語でも意味を推測することが可能です。例えば

電脳病毒 →  コンピューターウィルス

恐怖分子 →  テロリスト

西紅柿  →  トマト(西洋の赤い柿という意味)

超級市場 →  スーパーマーケット

などは、漢字を見ると「あれ」っと思いますが、じーっと見ているうちに意味が何となく掴めてきます。

さらに、日本語には音読みと訓読みがあり、音読みの中にも呉音・漢音・唐音などがあり非常に複雑で大変です。例えば「明」という漢字は、訓読みでは「あかるい」、呉音では「みょう」、漢音では「めい」、唐音では「みん」と発音します。1つの漢字だけで4つも5つも発音があるのが普通です。それに対し中国語では、1つの漢字には1つの読み方しかない場合が多いです。中には複数の読み方をするものもありますが、日本語のように殆どの漢字に4つも5つも読み方があるなどという複雑さはないです。

以前中国人から、「日本の地名や名前はとても読み方が難しいけど、日本人はなぜ読み方が分かるのか。『服部』を『はっとり』なんて絶対に読めない」と聞かれたことがあります。それに対し「日本人でも全ての地名や名前の読み方は分からないから、「フリガナ」と言ってひらがなを併記することが多い」と言ったら非常に驚いていました。

中国語にも「ピンイン」という、中国語の音をアルファベットで表記する方法がありますが、基本的には小学生が学校教育で使用するもので、大人が日常生活で使用するようなものではないそうです。

 

3. 文法がシンプル

中国語には現在形、過去形、未来形といった概念がありません。

「私は毎年日本へ来ます」は「毎年来日本

「私は去年に日本へ来ました」は「去年来日本

「私は5年後に日本へ来ます」は「五年後来日本

となり、過去形や未来形と言った時制はありません(英語でいうと現在完了形に相当する「持続、経験、完了」などを表す文法はあります)。

そして疑問文についても、英語は疑問詞を文頭に持って来て語順が変わるなど非常に複雑ですが、中国語では語順が変わりません。

Mr.Yamada teaches English → 山田教英語

Does Mr.Yamada teach English ? → 山田教英語

What does Mr.Yamada teach ? → 山田教什么

と言った形で、Yes/Noの疑問文は文末に「」をつけるだけ、疑問詞疑問文は質問したい単語を疑問詞に帰るだけです。

中国語検定3級までで一通りの文法は習得しますが、英語に比べると文法の量は少ないです。その代わり、文法を習得した後の単語の使い方(語法)は鬼のように難しいです。

例えば、日本語では犬も猫も猿も「1匹」と数えますが、中国語では動物毎にかなり細かく数え方が決まっています。

4. 日本語との違いを楽しめる

同じ単語でも、日本語と中国語で全く違う意味を表すものがあります。例えば

手紙 → トイレットペーパー

汽車 → 自動車(HYUNDAI自動車は中国語では「現代汽車」と書きます)

愛人 → 配偶者

老婆 → 奥さん

などです。他にも、昔の日本語が中国語に残っていたり、昔の日本語が中国語に残っていたりします。例えば、戦前まで日本語ではトンネルのことを「隧道」と呼んでいましたが、今でも中国語では「隧道」と呼びます。一方、古代中国語では「What」を表す漢字は日本語と同じ「何」でしたが、現代では「什么」という漢字を使っています。

 

初級レベルの中国語で難しいのは発音だけだと思います。そこだけは中国語学校かオンラインレッスンで習った方が良いと思いますが、発音さえクリアすれば初級レベル(中検3級レベル)までで難しいことはなく、旅行会話であれば十分ではないかと思います。少し中国の漢字を知っているだけでも中国旅行は圧倒的に楽になります。初級を過ぎると全く成長を実感できなくなる中級の壁に悩まされます・・・

 

<検定試験について>

最後に、中国語の検定試験について補足します。日本人が受験する主要な中国語の検定には「中国語検定(中検)」と「HSK」があります。中検(と略すと「中学校卒業検定」みたいですが)は英検と同じように日本国内で実施される日本人向けの試験です。一方、HSKは「漢語水平考試(中国語レベルテスト)」の略で、中国政府教育部の認定で全世界で実施しています。

中検と英検との最大の違いは、英検は英語だけで試験が行われるためネイティブなら比較的簡単に英検1級に合格すると聞きますが、中国語検定の場合は和訳と中国語訳があるので中国人だからといって合格するわけではありません。2級までは筆記のみ、準1級と1級には面接試験があります。

中国語検定は、準4級、4級、3級、2級、準1級、1級の計6級があり、3級に合格すると初級卒業、準1級に合格すると中級卒業などと言われます。3級までの勉強時間は200~300時間が目安と言われています。3級に合格すると、基礎的な発音と一通りの文法を習得したことになりますが、ここから2級に合格するまでがかなり大変です。私は合格までに2回落ちました。

個人的な印象では中検3級と英検3級は同じくらいのレベルでしたが、中検2級は英検2級と英検準1級の間くらいのレベルではないかと感じました。中検準1級は英検1級に匹敵するほど?(どちらも合格していないので知りませんが)難しく、中検2級から中検準1級は非常に時間がかかり、日本に住んで合格するのはかなり大変ではないかと思います。私は2級に合格した時点で準1級のリスニングを聞いてみましたが、さっぱりわかりませんでした。私は将来的には準1級までを目指したいと思います。

中検1級に至っては、30数年の中国語検定の歴史の中で歴代の合格者が300名もいません。英検は「1級に合格してからが通訳・翻訳のプロとしてのスタート」と聞いたことがありますが、中検1級はプロの通訳者が10年かけて合格するかどうかのレベルです。ネイティブの中国人が大勢受験しており、中国人でもバタバタと落ちています。これは中国語検定というより「通訳・翻訳検定」という方が相応しいのではないかと思います。「中検準1級」というのを聞いて、中国語学習者であればその凄さがすぐ分かるのですが、そうでなければ履歴書に書いてあっても「英検準1級と同じくらいか」と思われてしまいます。ここが中国語学習者にとって残念なところです。

HSKについては全世界で実施されている試験ですが、中国語検定とは逆に1級が最も簡単で6級が最も難しいです。日本人向けではないので漢字を書かせる問題などもあり、4級くらいまでは日本人にとってはかなり簡単ではないでしょうか。中検が細かい単語や文法をピンポイントで聞いてくるのに対し、HSKは大雑把に全体の意味を聞いてきます。HSKは中国が公式に実施していることもあり、合格すると中国での就労ビザ発給や留学にも有利に働きます。

www.asianlifereport.com

 

*1:もともと清の時代に北京で満州族の官僚が使っていた言葉という意味を表す「満大人(マンダイレン)」が由来らしいです