発生主義と現金主義について説明します

前回、損益計算書は売上・費用・利益を記載するものだとお伝えしました。

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しかし「費用」と言っても、支払った金額をそのまま費用にしてしまう(現金主義)と色々な不都合が生じます。

 

<例1>
毎月15万円の売上があり、様々な費用が毎月5万円かかってます。
毎月の事務所費用は5万円ですが、4月1日に4月から9月分までの家賃計30万を一括で支払いました。

この支払をそのまま費用にすると、毎月の損益計算書はどうなるでしょうか?

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毎月売上が一定で、家賃も一定のはずなのに、家賃の支払日が4月だったため4月の費用だけ5万+30万=35万となり、4月だけ赤字になり5~9月は黒字になっています。

つまり、お金を支払った日を基準に売上や費用を計上してしまうと色々と不都合があるのです。そこで、お金を払った日ではなく、費用が発生した日を基準に帳簿をつけることを「発生主義」と呼びます。

発生主義に基づくと、家賃は契約期間全体に渡って費用として計上されます。30万を4〜9月の6ヶ月で計上するので、1ヶ月あたりの家賃は30/6=5万円となります。

他の費用5万円と合わせて、1ヶ月あたりの費用は10万円となり、実際の損益計算書は以下のようになります。こちらの方が違和感が少ないのではないでしょうか。

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<例2>
もう1つ例を挙げます。
友達から借りた5万と自分で準備した5万を元手に、4月にパソコンを10万円で仕入れて、それを6月に20万円で売りました。
これを現金主義で計算するとどのようになるでしょうか。

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しかし、これでは4月が赤字で6月が黒字になります。損益計算書を見た人からすれば分かりにくくて仕方ありません。そこで、費用についても6月に計上して、以下のようにします。これを「費用収益対応の原則」と言います。

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ここまでは、とてもシンプルな話ではないでしょうか?


しかし、この「現金を支払った時点で費用を計上しない」という発生主義は、不正を生む温床にもなります。現金支出と費用計上が一致していないので、いくらでもウソがつけてしまうのです。例2で取り上げたパソコンの販売を基に説明します。

 

友達から借りた5万と自分で準備した5万を元手に、4月にパソコンを10万円で仕入れて、それを6月に20万円で売りました。先ほどのこの例ですが、発生主義で費用を計上すると、5月時点での貸借対照表は以下のようになっています。 

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パソコンは4月に購入してお金も4月に支払いましたが、上述の通り費用に計上するのは6月なので、4月と5月の間は資産として持っておくのです。

つまり、6月に売上が計上されるまで、パソコンは資産に計上されています。
そして6月にパソコンが売れると、貸借対照表は以下のようになります。 

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10万のパソコンが顧客へ渡され、代わりに20万円の現金が入ってきます。そして、売上は20万円ですが費用が10万円計上されるので、利益剰余金(=利益)は10万円となります。ここでも貸借対照表の借方と貸方が一致していることをご確認ください。

 

ところで、5月の時点では「6月にパソコンが売れる」というのは見込みの話に過ぎません。パソコンはモデルチェンジしていくので、もし機種が古くなれば在庫を倉庫に置いておくのはスペースが勿体なく、廃棄した方が良いかも知れません。
例えば、もし6月にパソコンが売れずに廃棄すると、損益計算書は以下のようになります。

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全期間の合計で損失が10万となります。
ここで1つ疑問が生じます。

古いパソコンを廃棄した時点で費用が発生するということは、逆に言うとパソコンを捨てなければ永遠に費用は発生しないのでしょうか?


例えば、今から25年近く前のWindows95のパソコンを倉庫に置いていても、売れる見込みはほとんどないでしょう。または、壊れているパソコンを倉庫に置いていても、売れる見込みはないはずです。

 

しかし、そんな「売れるはずがないパソコン」でも、捨てずに在庫として倉庫に保管しておけば費用が発生しないということになるのでしょうか?

 

損益計算書は経営者の成績表」と言いましたが、もし壊れたり古くなったパソコンを捨てずに倉庫に取っておく限り費用が発生しないのであれば、その分だけ利益が増えて経営者は喜びます。しかし、それは「正しい成績表」と呼べるでしょうか?

 

そんなはずがないですよね。壊れたり古くなったりした、売れる見込みのないパソコンについては、捨ててなかろうが売れてなかろうが費用にしなければなりません。

ここで大きな問題が発生します。


その問題とは、「売れる見込みがあるかどうか」は人によって解釈が分かれるということです。

 

ひょっとしたら、誰がどうみても売れるはずのない25年前のモデルのパソコンであっても、経営者は「これは骨董品のように価値が出てくるんだ。だから費用にする必要はない。資産だ。」と主張するかもしれません。

 

従って、「本当にその在庫には商品としての価値があるか」を測定する在庫(棚卸資産)評価という手続は非常に重要になります。

 

※「将来、会計の仕事は全てコンピューターに置き換えられる」などとも言われますが、棚卸資産の評価などはなかなか置き換えられないのではないかと思います。「その商品が売れる見込みがあるか」というのは判断が必要だと思うので、簡単にコンピューターには置き換えられないのでは?と思います。

 

在庫評価というのは人によって判断が分かれるところでもあり、粉飾を生みやすい分野の1つです。

 

実際にはもう少し込み入っていて複雑です。そこで次回は、実際の粉飾の手口について詳しくご説明します。